BS2 マスター・テープ 荒井由実”ひこうき雲”の秘密

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 近年、マスター・テープを再生しながら関係者が録音当時を振り返るという手法は、海外の名盤を中心にDVD化が進んできた。録音技術の進化に伴い、複数の演奏者が一斉に1本のマイクに向かって録音していたものが、2トラック録音になって演奏者を2班に分けて2本のマイクで同時に録音したり、演奏を2回に分けて録音して後でシンクロさせることが可能となった。2本もしくは2回に分かれることで、音の分離がよくなって音質がアップしたり、Stereo再生が可能となった。これが4トラック、8トラックとマルチ・トラック化していくことで複雑な録音が可能となっていった。

 分かり易く例を挙げると、陸上競技でフィールド競技とトラック競技があるが、録音テープをこのトラックに見立て、レーンを分けずに一斉に”よーい、ドーン!”でごちゃ混ぜに走り出すのが1トラック録音。8レーンに分けて一斉に8人で整然と走ったり、8人に別々に走ってもらい後で同時に再生して1つのレースに仕立てるのが8トラック録音。1トラック録音を8本横に貼り合わせれば8トラック録音になるじゃないかと思うかもしれないが、1トラック時代はシンクロさせる技術がなかったので不可能だった。

 よって、8トラック録音では、1トラックにヴォーカル、2トラックにコーラス、3トラックにベース・ギター、4トラックにギター、5トラックにドラムス、6トラックにピアノ、7トラックにサックス、8トラックに手拍子のように分けたり、これが16トラックになればドラムスだけでもバス、スネア、ハイハット、シンバルみたいに4つに分けたりすることも可能となる。こうして完成したのがマルチ・トラックのマスター・テープと呼ばれる。
 また、失敗すると1トラック録音は全員で始めからやり直しとなるが(ものすごい緊張感!)、マルチ・トラック録音は間違えた人だけやり直せばいいし、ヴォーカルで3トラック分あれば、歌い直さなくても3回歌った中から一番イイ所を抽出してつなげることも出来る。

 最後に、Stereoの場合2本のスピーカーからの再生が基本となるため、16トラックから左右2トラックにミックス・ダウンする作業(混ぜて、数を減らす)が必要となる。16トラックを2つに分けるというような単純な作業ではなく、一部でベースを強調したり、ドラムスを弱めたり、ヴォーカルにエコーをかけたり、ピアノの音を消したりとトラック数が多いほど複雑で緻密な作業が必要となる。こうして完成したのが2チャンネルのマスター・テープと呼ばれる。(尚、2トラック録音の場合は、そのままだと右に演奏、左にヴォーカルみたいに、とてもStereoとは言えない代物になってしまう。だから、複雑なミックスはせずに、1トラックのモノラルにミックス・ダウンするのが一般的だった。)



 1月16日(土)午後9時、NHK BS2で「マスター・テープ 荒井由実”ひこうき雲”の秘密」が放送された。
 松任谷由実、バック・バンドを務めたキャラメル・ママ(後のティン・パン・アレー)から細野晴臣、松任谷正隆、林立夫、そしてディレクターとエンジニアー等が参加。使用されたのは16トラックのマスター・テープで、正直その音の良さに感激した。番組内容も良くて、本当に無料(タダ)で放送していいのですか?と思うほど充実していた。(でも、ちょっと短かった。もっと聴かせて欲しかった。)

 長い間、Alfaレコードとの関係が悪かったのか、荒井由実時代の作品は手を変え品を変え発売されてきたのだが、リマスターされるのが非常に遅かった。やっと、04年に4枚のオリジナル・アルバム+シングル集+ボーナスDVDのBoxという形でリマスターが行われた。

Yumi Arai 1972-1976
EMIミュージック・ジャパン
2004-02-18
荒井由実

ユーザレビュー:
音響(リマスタリング ...
音圧、音質は2000 ...
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 Amazonのレビューでは、よっぽど旧盤CDの音質が悪かったのか、リマスターにより音質が改善されたとか音圧が上がった等絶賛している。実際に聴いてみて十分良い音なのだが、期待が大き過ぎたこともあり、この73年発売の「ひこうき雲」については思ったほどの音質ではないと感じた。…。2チャンネルのマスター・テープは酷使により劣化していたのか…。さもなければ、マスタリング作業自体が今ひとつだったのか…。理由はよく判らないが、いずれにせよ音質的にはこのBoxが現時点での決定盤なので誤解のないようお願いします。

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 でも、今回の番組で16トラックのマスター・テープからデジタル・リミックスすれば、とんでもなく良い音質で復刻出来そうなことが判明した。ぜひお願いしたい。ただ、気になったのがユーミン自身が「リミックスしよう」と言っていたこと。自由にリミックスしてもらうのはOKだし、聴いてみたいと思うのだが、オリジナルのミックスを尊重したリミックスもお願いします。はっきり言えば、ミックスは変えないまま音質だけ向上・改善して欲しい。それにボーナスとしてニュー・ミックスが加わるのなら大歓迎!ユーミン様お願いいたします。

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 また、16トラックのマスター・テープの前段階のセッション・テープも残っていて、相当な数のアーリー・テイク、別テイク、没テイクが存在するとの情報もあるので、ぜひ、The Beatlesのアンソロジー・シリーズみたいに公表して欲しいです。「プチッ…ヒコウキグモ…テイク ワン! プチッ しろいさかみちが~ プチッ…ストップ ストップ!ハジメカラ ヤリナオシ! テイク ツー! プチッ 」こういうコントロール・ルームとのやりとりをチョット聴いてみたいです。だめでしょうか?ユーミン様。

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