Felicia Sanders(フェリシア・サンダース)I Wish You Love & That

HMVジャパン

 11年9月英国の復刻専門レーベルSepia RecordsからFelicia Sanders(フェリシア・サンダース)の第2集が発売された。

 因みに、第1集はSong From Moulin Rouge / Felicia At The Blue Angelで前回紹介済み。 ↓

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 前作はColumbiaから発売されたシングル16曲と55年の初のリーダー・アルバムAt The Blue Angel(CL-654)を収録したベスト盤的内容であったが、今回は以下の2枚のアルバムの2イン1である。

 前半がI Wish You LoveのStereo盤である。
 ? こんなタイトルのアルバム知らない。
 ブックレットによると、録音は1959年で、カタログNo.、ジャケット、収録曲は以下のとおり。↓

 I Wish You Love Time Records T-70002 Stereo盤

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 A1 I Wish You Love
 A2 Said to My Heart, Said I
 A3 If You Go
 A4 I'm Through With Love
 A5 Warm All Over
 A6 Lonely Town
 
 B1 When the World Was Young
 B2 Look at Me
 B3 We'll Go Away Together
 B4 My Kind of Trouble Is You
 B5 Anyone Would Love You
 B6 If I Forget You

 59年録音ならStereo盤は有り得ると思うが、
 ? この収録曲に見覚えが・・・。
 ! A6B6を削除するとこのアルバムと同じだ。↓

 Felicia Sanders Time Records S/2110 Stereo盤

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 ? ここで、また疑問発生。カタログNo.が下のアルバムと逆転してる。↓

 Songs Of Kurt Weill Time Records S/2007 Stereo盤

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 ↑前回は67年のMainstream Recordsからの再発盤を紹介したが、こちらがオリジナル・ジャケット。
 60年発売と言われているが、どう見てもカタログNo.2110と2007では、若い数字の方が先に発売されたはずだ。
 そもそも、T-70002とNo.2110の相関関係も分からないし、収録された音源が59年録音ということも疑わしくなってくる。


 そこで、Billboard誌での関連記事を中心に事実関係を調べてみた。

 1) 60年2月29日42ページにI Wish You Love T-70002
※ひょっとしたら、英国盤ではないかと思ったが、確かにこのアルバムが60年1月か2月頃に米国内で発売されていたことが確認できた。


 2) さらに手がかりは、Max Roachのアルバム。

 Award Winning Drummer Time Records T-70003 ↓ 

Max Roach - Award Winning Drummer

 ↑これが録音されたのが58年11月25日。
※よって、I Wish You Love T-70002の録音もこの前後だと推測され、ブックレット記載の59年録音に信憑性が出てきた。
 尚、業務用や一部のマニア向けだったStereo盤が、一般のリスナー向けに普及し始めるのは59年からである。

 その直後の60年4月25日からStereo録音の魅力を前面に押し出したEnoch LightのPersuasive Percussionが13週連続で全米1位になった。
 これを受け、Time RecordsもStereo録音に重心を移したSeries 2000を開始し、カタログNo.は頭文字にSを配した2000番台に変更された。
 因みに一部しか確認されていないが、Series2000としてMono盤も併売されていたようだ。


 3) 60年6月13日38ページに、その第1作のAl Caiolaの記事があった。

 Percussion and Guitars Time Records S/2000 ↓

Al Caiola - Percussion and Guitars

 ↑Various Artists扱いで、Al Caiolaは編曲を手掛けたと記載されている。
 確かにジャケットにAl Caiolaの記載はないが、最近ではAl Caiolaのアルバムとして扱われているようだ。


 4) 同じくAl Caiolaが編曲を手掛けたアルバム発売された。

 Percussion Español Time Records S/2006 ↓

Al Caiola - Percussion Español

 ↑録音は60年5月16、17日

   
 5) 60年8月29日36ページにSongs Of Kurt Weill S/2007
 ※恐らく発売は60年7月か8月ではないだろうか。


 6) そして、カタログNo.がアルバムFelicia SandersのS/2110にたどり着くのは63年頃である。


 7) Time Recordsが活動したのは59年から66年までとの情報がある。

 以上のことから、I Wish You Love T-70002から2曲削り、タイトルとジャケットを替えてSeries 2000として再発したのが、Felicia Sanders S/2110と想像される。
 なぜならば、59年に録音して59年に発売し、60年初頭に2曲追加してタイトルとジャケットを替えて再発し、63年に再び2曲削ってSeries 2000に組み込むとは考えにくいからだ。
 要するに、Felicia SandersというタイトルのアルバムはI Wish You Love の編集盤であり、オリジナル・アルバムとしてはI Wish You Loveの前にも後にも存在しなかったことになる。
 因みに、個人的にはジャケットはFelicia Sanders S/2110の方がステキだと思う。 


 それでは話を元に戻そう。

 本CDの後半はThat Certain FeelingのStereo盤である。
 録音は58年であり、Stereoが一般消費者向けに普及しだすのが59年だから、本当にStereoかまたしても疑わしい。↓

Felicia Sanders - That Certain Feeling

 しかし、58年11月3日のBillboard誌40ページにThat Certain Feeling Decca DL 78762 Stereo & Monauralの記載があるので、間違いなくStereo盤とMono盤が58年9月か10月頃に発売されていたことが確認できた。
 流石Decca! 大手レーベルだけのことはある。

 それでは、Stereo盤の肝心な音質に話を移そう。

I Wish You Love/That Certa
Sepia Recordings
2011-09-13
Felicia Sanders

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 まずは前半のI Wish You Loveであるが、右からヴォーカル、左から演奏で、中央から音のしない超古典的なStereoミックス。

 The Beatlesの初期のStereo盤のミックスと同じで、普通なら速攻で落第なのだが、本作については全く違和感がないのである。
 The Beatlesの場合は、例えばJohn Lennonのヴォーカルとリズム・ギターが左右に泣き別れになるし、ロック・バンドなのにバンドとヴォーカルが分離してしまうなんて普通は音場的にありえないので、かなりの違和感がある。

 一方、ジャズやポップスでもソロ・シンガーの場合は事情が違う。
 ヴォーカルと演奏はそれぞれ別人であるし、演奏と言うよりは伴奏と言った方が適切であるし、実際そういう配置はよくあるので音場としても違和感がない。 

 それと、感動的な高音質であり、実に生々しく、かなり得した気分だ。

 一方、後半はちょっとガッカリで、音質は前半より1ランク以上落ちる。



 大ヒット・アルバムではないのでマスターの酷使は無いと思うが、経年劣化により一部で音が濁って聴き苦しい。
 録音が1年古いので仕方ないのだが、前半が良過ぎるので余計に目立ってしまう。
 Decca録音なのだから残念で仕方ないのだが、ひょっとするとMono盤の方が状態が良い場合もあるので、ぜひMono盤を聴いてみたいものだ。
 単独でMono+Stereoの2イン1なんてお願いできないであろうか。





 とは言え、個人的な感想としては、前半だけで十分元は取れる内容だと思う。
 また、ライナー・ノーツは音楽監督でFeliciaの夫でもあったIrving Josephと親交のあったFreeman Gunterが手掛けており、録音データ等は今ひとつであるが、情報量の少なさをFeliciaへの愛情と尊敬で補ったという感じだ。

 このSepia Recordsの復刻が第3集へと続いてくれればいいなと切に願う。

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