Helen O'Connell (ヘレン・オコネル) A Long Last Look (2CD)

このジャケット、前々から気になっていた。
57年RCA Records傘下のVik Recordsから発売されたLP。
昔のヒット曲をセルフ・カヴァーしたそうだ。昔?
Helen O'Connellは20年5月23日米国オハイオ州で生まれ、39年よりJimmy Dorsey楽団に参加。
Bob Eberly(男性)との2枚看板での専属歌手として、41年にはDecca Recordsから発売したAmapola(1位)、Yours(2位)、Green Eyes(1位)↓をヒットさせている。
また、42年1月24日公開の映画The Fleet's In(Dorothy LamourとWilliam Holden主演)にDorsey楽団と共に出演しており、この中で歌われたTangerine(監督のVictor Schertzinger とJohnny Mercerの共作)は6週連続で1位となった。
水兵とダンス・ホールの歌手とのロマンスで、真珠湾攻撃直後の公開であることを考えると戦意高揚映画のように思われそうだが、28年公開の同名映画のリメイクであり、ロマンスにミュージカルとコメディを詰め込んだ娯楽映画だ。実際のところ監督のVictor Schertzingerは41年10月26日に亡くなっており、映画はその前に完成していたとのことだ。
↑演奏は4分12秒から。
因みに、この映画は60年に設定を海軍から陸軍に変更してリメイクされた。
主演はElvis Presley、タイトルはG.I.Blues!!!
恐るべしParamount!3匹目のドジョウだ。
ここで、私が持っているDecca音源収録のCDを紹介しておこう。
↑Amapola収録。94年米国Rhino Records発売の1920s、1930s、1940-1944、1945-1949、1950-1954、1955-1959の大ヒット曲を収録したコンピレーション。レコード盤起こしの音源が中心であるが、ポピュラー音楽の歴史は55年以降だけじゃないことを雄弁に物語る好企画。プチッ、プチッとノイズが入るが、そんなことは気にならない。真のスタンダードとはどういうものかを改めて認識させてくれる6枚。(廃盤なのが残念)
↑Green Eyes収録。94年米国MCA発売の31年から66年までのDecca Recordsのスタンダード・ヒットを収録した2枚組コンピレーション。(これも廃盤か…)
43年結婚により一旦引退したが、51年離婚を機に復帰し、Capitol Recordsに録音を残した。ところが、なかなか資料が見つからず、51年から56年頃まで14枚以上続いたToday's Top Hits by Today's Top ArtistsというCapitolのコンピレーションLPにかろうじて名前を見つけた(たった5曲)。

Capitol H-9104 - Today's Top Hits by Today's Top Artists, Volume III - Various Artists [1952] Charmaine - Billy May/Slow Poke - Helen O'Connell/Cry - Four Knights/Shrimp Boats - Dick Beavers//Any Time - Helen O'Connell/Jalousie - Clark Dennis/The Little White Cloud That Cried - Lou Dinning/Weaver Of Dreams - Nat "King" Cole
一方、03年米国Collectors' Choice Musicより一部ではあるが、そのCapitol録音24曲が復刻されていた。↓

続いて10年には英国Jasmine Recordsより60曲収録の2枚組が発売された。↓

Collectors' Choice Music収録の24曲のうちIn a Little Spanish Townを除く23曲を収録している。
また、Disc2の#27から30はKapp Records音源、#31と32はVik Records音源であり、これで60+1-6=55曲のCapitol音源が現存することが判った。
私はHMVジャパンのセールで1,000円、かつ、ポイント15倍の実質850円で購入したのだが、一部対象外はあったがJasmine盤は1枚モノも2枚組も1,000円であった。(Margaret Whitingは4枚組2,000円)
これっておかしくないか?採算は取れているのか心配になってくる安さだ!
前々から50年代音楽に興味がありながら、機会を逃していた私にとって、これは好機と17セット大人買いしてしまった。(女性ヴォーカルを中心にジャケットのステキなものを…)サンキューHMV殿!
ただし、気になるのはこの値段で大丈夫かということ。(安かろう悪かろうでは困るのだが…)
まず、ブックレットは6面見開きで
・1ページはジャケット。(57年のVikのLPジャケットをベースにしているのは反則か…)
・2ページ半に曲名・作者・収録時間・共演者・伴奏のバンドの記載のみで、録音データはなし。
・残り2ページ半にライナー・ノーツ。(少なくともネットのWikipediaよりは内容は濃く、一部だが収録曲についてのコメントもある。それなりに参考になった。)
・写真やメモラビア等は一切ない。
・最後に肝心な音質は、あくまでも50年代の録音であることが前提であるが、一部ブラス等の強奏が耳障りな箇所もあるが、総じて良好と言って良いだろう。録音データがないため想像なのだが、恐らく録音順と思われ、後半に進むほど音質は良くなっていく。
・とにかく歌はうまい。中でも同じCapitol所属のDean Martin(2曲)やTennessee Ernie Ford(2曲)との共演は特に気に入った。(男性歌手とのデュエットはDorsey楽団時代から得意としていた。)因みに、03年英国Vocalion RecordsよりGisele Mackenzieとの共演(6曲)とそれぞれのソロ(9曲×2)を収録した企画盤(24曲)が発売されていた。(Helenの15曲はJasmine盤にも発見できるので恐らく同じと思われるが、現在廃盤)↓

↑Gisele Mackenzieは55年5月にはRCA傘下のX Recordsに移籍してHard To Get(1位)を録音しているので、全て50年代前半の作品と思われるが、その後XはVikに移行しているので、RCAが子会社を使ってCapitolから引き抜きを仕掛けていたことが判る。
結論としては、今回のJasmineからの2枚組、この値段でこの内容なら十分満足できた。 オススメの1枚。
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