Zombies(ゾンビーズ) Odesey & Oracle CBS Years 1967-1969

HMVジャパン

 11年ドイツのRepertoire RecordsからThe ZombiesのOdessey & Oracleが復刻された。
 副題にThe CBS Years 1967-1969とあり、2枚組のデラックス盤となっている。
 繰り返される復刻に、正直言って「また、出たか!」が本音である。
 既にアナログ盤も持っているので、これ以上は勘弁して欲しいところだが、
 無人島の10枚に入る大好きなアルバムであり、やはり気になってしまう。
 08年の40周年盤は無視できたが、今回は我慢できずに買ってしまった。 
 
 まず、持っているCDを中心にThe Zombiesの復刻状況を整理しておこう。

 初めて買ったのは89年テイチク・レコードから出た3枚だった。
 ①begin here 22DN-22 1st LP 14曲+ボーナス 6曲
 ②I Love You 22DN-23 シングル集 20曲
 ③Odessey & Oracle 22DN-24 2nd LP 12曲+ボーナス 6曲
  
 89年と古いこともあり音質は今ひとつなのだが、特筆すべきは①と②で現在ではほぼMonoで統一されたDecca時代のシングル10枚20曲のうち16曲がStereoで収録されていることだ。
 Decca音源はMonoが基本だったのだが、69年のTime Of The Seasonのヒットを受けて急きょStereoミックスが作成された経緯がある。
 これにはメンバーは誰も関わっていないし、極めて短期間での作業だったため、やっつけ仕事となってしまった。
 にもかかわらず、その後はこれらStereoミックスが基本となり、Monoミックスはお払い箱となった。
 この辺の経緯はこちらのレビューを参考にして。(クーちゃんてのが私です)↓

The Decca Stereo Anthology
Big Beat UK
2002-11-15
Zombies

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by The Decca Stereo Anthology の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル


 初期に発売されたCDでは、録音時期は同じでもStereoで収録された曲の方がMonoで収録された曲よりも格段に音質が良かった。
 たぶん、MonoはStereoミックスが存在しない場合、もしくはStereoミックスが激しく劣化していた場合に仕方なく数合わせ的に使用されたのだと思う。 
 そのMono音源はマスター・テープからではなく、何十年も前にお払い箱となって、倉庫でホコリをかぶっていたコピーが元だ。良い音がするはずがない。

 ところがマスター・テープに遡ってのリマスター作業が一般的になると状況が変化する。
 StereoミックスもMonoミックスも素晴らしい音質に改善された。
 従前、古いコピーが使い回されていたMonoの改善度合いはすごかった。
 「Monoって、こんなに良い音だったっけ?」
 技術が進歩する中で、「Mono=古い・劣る・悪い」の風潮は確かにあった。
 いわゆる「Stereo至上主義」。
 Mono音源しかないものは、電気変換により擬似Stereoまで作成された。
 2トラック以上の多重録音からミックスされたリアルStereoとは違い、擬似Srereoは1トラックを左右に割り振って、特定の周波数を強くしたり弱くしたり、ディレイをかけたりして耳をごまかすのでモコモコした音になってしまう。
 「とにかくStereo」が時代の要請であり、消費者の欲求だった訳だ。
 製作サイドとしては、商売である以上、それらに応えざるを得ない。 

 たとえプロの耳では優劣が分かっていても、消費者の意識が変わらなければマーケティングは変わらない。
 たとえ現場のスタッフに使命感や正義感があったとしても、経営側には損得勘定しかないので会社の方針を変えるのは難しい。
 こんな会話が浮かんだ…
 スタッフ「Monoの方が断然音が良いですよ。Monoで出しませんか?」
 役員「アホか、今さらMonoなんて過去の遺物を買うお客さんがいるか!」
 スタッフ「ちゃんと宣伝すれば、お客さんも理解してくれると思いますが…」
 役員「時代に逆行しとるだろ、誰がそんな宣伝に金なんてかけれるか!」
 スタッフ「ちゃんとマーケッティングしてはどうでしょうか?」
 役員「そもそも、好き好んでMonoなんて買う客がどれくらいいると思うんだ?」
 スタッフ「上手に宣伝すれば、述べ50,000,000人ぐらいは固いと…」
 役員「5,000万人?????????」
 スタッフ「我が社はお宝を抱えています。彼らが既に持っているStereo盤をMono盤に買い換えたらどうでしょう?」
 役員「誰のことを言ってるんだ?」
 スタッフ「50,000,000 Elvis Fans Can't Be Wrong.です。」

HMVジャパン

 スタッフ「ちょうどJapanでCDってのが発売されたので、始めにMono盤CDを買わせて、数年後にやっぱりStereo盤CDの方が良いと焚きつけて、もう1度買わせることができるかも…」
 役員「そんな一粒で2度おいしい作戦なんて通用するのかね?」
 スタッフ「彼らにはMono LPを擬似Stereo LPに買い換えた実績があります。」
 役員「そのプロジェクト、前向きに検討したまえ!」
 (注:以上は個人的妄想によるフィクションである。)

 ロックンロール誕生30周年に当たる85年。
 米国RCA RecordsはElvisの初期作品のCD化でMono盤を採用した。
 確かに良い音だった。
 ポピュラー・ミュージック界において、一大勢力の意識が変わり始めた。
 82年に産声を上げたCDの普及とBack To Monoへの動きに弾みが付いた。

 The Beatlesのデビュー25周年、Sgt.Peppers発売20周年に当たる87年。
 It was twenties years ago today.(それは20年前の今日だった)の年。
 英国EMIが初期の4枚のアルバムはMono盤を採用すると発表した。
 批判はかなりあったが、マニアにはその後発売されたMonoシングル・ボックスがマストとなり、Mono LPのCD化が切望されることとなった。(09年に願いが叶い、やっとMonoボックスが発売された。)
 現在でもMonoと聞いただけで、強い拒否反応を見せるオーディオ・ファイルがいるが、マニアの間では発売当時アーティストがMonoとStereoのどちらのミックスに重点を置いていたかで判断するのが常識となっている。

 ただし、筋金入りのマニアにはそんなの関係ない。
 両方買わねばならない。
 正確に言えば、全部買わねばならない。
 All and Mustがポリシー。恐ろしい…。
 有るものは全てを発売するのがレコード会社の義務だと思っている。
 一方、レコード会社はマニアを対象に商売しても儲からないと知っている。
 皮肉なことに営利主義のレコード会社のおかげで、マニアは破産せずに済んでいる。

 そんな私も、最近は適当なところで折り合いを付けて、浅く幅広く集めている。
 「このBox、俺が買わねば、誰が買う?」みたいな変な義務感とか、
 「あそこに売れ残っているCD寂しそう」みたいな脅迫観念は無くなった。
 
 かなり脱線したので話しを元に戻そう。
 
 97年英国Big Beat Recordsが驚くべき4枚組ボックスを発売した。
 その名もZombie Heaven(ゾンビの天国!)   

Zombie Heaven
Big Beat UK
1997-11-18
Zombies

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by Zombie Heaven の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

 ↑オリジナル・マスター・テープからリマスターされ、StereoとMonoのミックス違いは除き、別テイクや没テイクやライブ・テイクも含めてあるものはほとんどぶち込んでいる。
 Disc1にはDecca音源を発売順にMonoで収録。
 Disc2にはOdessey & Oracleと幻の3rd LP R.I.P.をStereoで収録。
 Disc3にはDemoを中心にレア・テイクを収録。
 Disc4にはBBCのライブ音源を収録。
 ブックレットも情報満載で素晴らしい。
 いわゆる決定盤である。
 特に面白いのはOdessey & Oracleの9曲目のThis Will Be Our Yearだ。


 ↑Mono盤。

 この曲はブラス・セクションをMonoマスターに直接オーヴァー・ダビングしてしまったため、Stereoにミックスし直せず、Stereo盤には電気的に変換された擬似StereoかMonoミックスが使用されていた。

 ネットで擬似Stereo盤を探したが見つからなかった。
 ひょっとすると、現在1番レアなのは擬似Stereo盤なのかも知れない。
 古いテイチクのCDは擬似Stereoだったので、今となっては貴重だな…。

 このボックスにはデモ録音とブラス入りのMonoミックスとセッション・テープに遡りリミックスし直したブラスなしのリアルStereoミックスの3曲が収録されている。
 その後のStereo盤はこのブラスなしリアルStereoミックスが採用されている。


 ↑ブラス抜きのStereo盤。

 たとえリアルStereoでもブラスなしじゃ価値が半減だ!
 Mono盤からブラスだけ抜き出すのは邪道として、ブラス入りの正真正銘リアルStereoミックスはできないだろうか?


 ↑Mono盤からブラスだけ抜き出してStereo盤にブレンドした人がいた!

 どこかにブラスだけのセッション・テープが残っていそうだけどな…。
 エンジニアのKen Jonesはトランペットの人が吹き間違えたら、どうするつもりだったんだろう?
 たぶん、完成したブラス・パートがあって、それをオーバー・ダビングしたのだと思う。よく調査して欲しいな…。
 いずれにしろ、既に廃盤なのが残念なマニア必携のボックスだ。

 98年同じくBig Beatより発売30周年に当たるOdessey & Oracle発売された。
 ボックスでお腹一杯だったが、これには跳び付いた。
 なぜならばStereoとMonoの2イン1だったからだ。↓

Odyssey & Oracle
Big Beat UK
1998-05-19
Zombies

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by Odyssey & Oracle の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

 Mono盤を聴いてみたかった!
 このアルバムはThe BeatlesがSgt.Pepper's Lonely Hearts Club Bandを録音したAbbey Road Studiosで同じ4トラックの機材で67年6月から12月にかけて断続的に録音された。(一部はOlympic Studiosで録音)
 67年10月23日先行シングルFriends of Mine / Beechwood Parkが発売されたが不発。
 続いて11月24日Care of Cell 44 / Maybe After He's Goneが発売されたが不発。
 そんな中グループ内の不協和音は顕在化していたものの、入魂のMonoマスターが作り上げられた。
 シングルの不発によりCBS Recordsの反応にも冷ややかなものがあり、突きつけられた回答は「何でStereoじゃないの?」だった。
 元々アルバム製作の予算が少なかったため、The Zombiesは事前に入念なリハーサルを行い、曲を練り上げてスタジオ入りした。だから、別テイクや没テイクのたぐいは極めて少なかった。
 節約した予算も使い果たしたところに、ミックスし直しの指示だ。
 いや、ミックスし直せとは言っていない。
 「Stereoミックスはないのか?こんなの話にならん。」である。
 コンセプト・アルバムとかトータル・アルバムとかLPに対する認識が大きく、かつ急激に変化し始めた67年であるが、やはり先行シングルの2枚の不発は大きかった…。
 CBSにやる気が感じられないし、ほとんどイジメである。
 曲を手がけていたキーボードのRod ArgentとベースのChris Whiteは自腹(印税)でStereoミックスに取り掛かるのだが、途中でギターのPaul Atkinsonとリード・ヴォーカルのColin Blunstoneが脱退してバンドは分裂。
 Stereoミックスが完成したのは68年1月1日だった。
 バンドの解散はアルバム発売まで伏せられることになった。

 長々と書いたが私が言いたいのは、MonoミックスこそがThe Zombiiesが意図した真のミックスということだ。だから、聴いてみたかった…。

HMVジャパン

 Mono盤を聴いてみての感想は、思ったほどの感動ではなかった。
 たぶん、マスタリングの問題だと思う。
 音の分離の良さからStereo盤に軍配を上げざるを得なかった。

 その後、マスタリング技術はどんどん進歩するのだが、続きは次回で…。


Odessey & Oracle
Repertoire
2011-01-21
Zombies

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by Odessey & Oracle の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック