Nat King Cole (ナット・キング・コール) After Midnight SACD

10年に2枚、11年に2枚と米国Analogue ProductionsからNat King ColeがSACDで復刻されている。
とりあえずAfter Midnightを買ったのだが、その秀逸な音質に驚嘆している。
このアルバムは91年発売の国内盤を持っているのだが、これは90年に米国Capitol RecordsからCD化されたものだ。
この時、オリジナル12曲に5曲を追加してComplete After Midnightとして発売されたのだが、17曲が録音順に並べ替えられていた。(米国盤の曲順は分からない。また、5曲追加でCD化されたのは87年が最初だ。)
1 You Can Depend on Me
2 Candy
3 Sweet Lorraine
4 It's Only a Paper Moon
5 (Get Your Kicks On) Route 66!
6 Don't Let It Go to Your Head
7 You're Looking at Me
8 Just You, Just Me
9 I Was a Little Too Lonely, and You Were a Little Too Late
10 Caravan
11 Lonely One
12 Blame It on My Youth
13 What Is There to Say
14 Sometimes I'm Happy
15 I Know That You Know
16 When I Grow Too Old to Dream
17 Two Loves Have I
※赤色がボーナス曲
これって…、どうなのよ?
録音順に並べ替えるのは、動機づけとしては一理ある。
例えばライブ録音をコンサート当日の演目のとおり没テイクも追加して再現したり、あたかもスタジオで録音に立ち会っているかのように存在するテイクを全てクロノジカルに時系列で収録したり、コンサートやメイキングを疑似体験するのには意味があると思う。
一方、このCDのように数日間に亘るセッションでのマスター・テイクのみを録音順に並べることに、意味はあるのか?
あまり無いと思う。(単に録音の順番が分かるだけだ)
99年に再リマスターされた際には、曲順が元に戻されている。↓

↑オリジナル12曲と過去のボーナス5曲に新たにYou're Looking at Meの別テイク1曲が追加。
実際のところ、私は91年のCDしか聴いたことがないので、この曲順で気に入ってるし、特に違和感もない。(これしか知らなかったのだから、あるはずがない。)
ところで、Nat King Coleとの出会いって?
東芝EMI系の各種オムニバス盤では常連なのだが、自分自身若かったし、特に強い印象は持っていなかった。この曲に出会うまでは…
Natは65年2月15日45才で亡くなっているが、このUnforgettableを50年(Mono)と61年(Stereo)に2回録音している。
91年6月11日に娘Natalieが父の持ち歌をカバーしたアルバムUnforgettable… with Loveを発売したが、そのハイライトとしてアルバムの最後に収録されたのがUnforgettableだった。
61年のマルチ・トラック録音からヴォーカル・トラックを抜き出し、父娘のデュエットに仕立てたものだ。
シングルは91年8月24日14位止まりだったが、意外と低順位だったことに驚く。
もっと、大ヒットした印象が強いのだが…。
それもそのはず、アルバムは5週連続1位となり、92年のグラミー賞でアルバム・オブ・ジ・イヤーを獲得した。↓
続いて買ったのが90年に発売されたCapitol Collectors Seriesだ。
私は92年に発売された国内盤を持っているのだが、国内盤のオムニバスに収録された曲とは比較にならない音質の素晴らしさに驚いた。↓
プロダクション・ノートは以下のとおりだ。
「このコンピレーションはオリジナル・ラッカー・・ディスク、フル・トラックMonoと3トラックのマスター・セッション・テープからマスタリングされている。」
「1曲目から5曲目はオリジナル・ラッカー・マスター・セッション・ディスクから変換されているので、時々針の引っかく音がする」
「1曲目から14曲目はMono AAD」
「15曲目から20曲目は3トラックのマスター・セッション・テープから変換されたStereo ADD」
要するにStereoの5曲はデジタル・リミックスされている。
マスター・テープのオーナー会社が本気で復刻したら、とんでもないことになることを痛感させられた。
日本に送られたハイ・ジェネレーションのコピーが音源では、とても太刀打ちできない。
43年11月30日の録音から始まるのだが、磁気テープの経年劣化とは無縁のラッカー盤だから驚愕の音質である。
3曲目と4曲目でプチッ、プチッと針音が目立つが、たぶん最新のデジタル技術なら除去できるはずだ。
5曲目は47年8月22日の録音だが、本当にラッカー盤が音源なのか…。
6曲目から磁気テープに切り替わるのだが、50年3月11日のMono録音でも全く問題なしだ。
8曲目には51年8月17日録音のUnforgettableが収録されている。
さすがCapitol、メジャー・レーベルのことだけはある!
この他にFrank Sinatra、Dean Martin、Peggy Lee、Jo Staffordの計5枚の国内盤が発売されたが、なぜか続編は発売されなかった。
仕方なく輸入盤を買いあさることになり、30枚ほどはあると思う。
そして久しぶりに買ったのが06年ドイツのBear Familyから出た11枚組↓
Stardust: Complete Capitol Recordings-1955-59
何と未開封(聴かなくては!)。
上で紹介したボーナス5曲と別テイク1曲も収録している他、07年発売の21曲盤に追加収録された55年7月録音の4曲もしっかり収録している。
続いて続編の11枚組L-O-V-E: Complete Capitol Recordings 1960-64も買ったのだが、こちらも未開封。
ところで54年以前はどうなってるんだろう?
熊家族さん続編もよろしくお願いします。
それでは今回のSACDに話を戻そう。
今回は11枚組ボックスにも未収録の2曲の別テイクが収録されている。
Just You, Just Me(Take1)とIt's Only a Paper Moon(Take3)の2曲。
マスタリングはKevin GrayとSteve Hoffman。
91年の旧盤CDでさえ良い音だったのだが、今回はもっとスゴイ。
音のバランスと分離が良くなって、Monoなのに音場が広くなった感じがする。
1番の改善点は、やはり音の質感だ。
56年の8月から9月の録音なのに実に生々しい。
久しぶりに秀逸なMono録音を聴けた気がする。
初めてCapitol Collectors Seriesを聴いた時ほどの感動ではないが、これなら他の3枚も期待できそうだ。
次は57年に8週1位となったLove Is The Thingを狙ってみようかな。↓
↑????? ジャケットにStereoとある。
57年でStereo盤って、どういうことだ?
ひょっとして59年以降にStereoで再録音したものか?
Martin Dennyみたいに。
気になる…。
この記事へのコメント
50年代の終盤からプレーヤーのステレオ・カートリッジが大量生産により値下げになったことで、一般家庭へステレオ再生装置が普及し始めたのですが、録音現場ではもっと以前からステレオ録音が始まっていたのはご指摘のとおりですね。
それと、確かRCAがElvisで、マスターが破損等した時のサブ録音を利用して、「Stereo」なるシリーズを発売していたのを思い出しました。
RCAは50年代後半に3トラックで録音したクラシックを、大量に3チャンネル(左、中央、右)のSACDで発売しています。私は2チャンネルStereoでしか聴いたことがありませんが驚くような音質でした。