Kyu Sakamoto (坂本 九) Sukiyaki (上を向いて歩こう) Stereo盤 

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 最近よくテレビで「上を向いて歩こう」を目にするようになった。
 東日本大震災からの復興への支援・支持の表明としてサントリーがCMで流しているからだ。
 70人以上の著名人が「上を向いて歩こう」と「見上げてごらん夜の星を」を分け合って歌っているそうだ。
 プロの歌手は流石に上手いのだが、俳優とかタレントは恐らくわざとちょっと下手に歌っている。
 そのヘタウマ加減に魔力があって、不思議なことに、一緒に歌いたくなってしまう。
 い~や、一緒に歌わせて下さい。
 出演者の魅力もあるのだろうが、このCMをプロデュースした人は天才だと思う。
 たぶん無数のテイクが存在するのだろうが、敢えてあれらのテイクを選んだ訳だ。

 歌の力、音楽の力、人と人をつなぎ、人の思いやりや優しさをつなぐ。
 涙(寂しさ、悲しさ)、
 上を向く(うつむかない)、
 歩こう(止まらない)
 幸せ(今は遠いけど、確かに存在する)
 悲しみ(やがて弱くなり、薄れてゆく)
 一人ぼっちの夜(春の日、夏の日、秋の日)
 やはりこの歌しかないね。
 世界で最も知られてる日本の曲のひとつだし…。
 知名度はあってもサクラ・サクラとか、
 元気は出てもアニメ・ソングではちょっとね…。
 でも、欧米圏ではSukiyaki(すき焼き)のタイトルで知られている。
 何とかならなかったものか…。

 NHKで毎週土曜日夜10時に放送されていた「夢であいましょう」で61年10月に「今月の歌」として取り上げられ、10月15日にはシングルとして発売され、大ヒットしたため放送は11月まで延長された。



 ↑92年に亡くなった作曲家中村八大の追悼番組。
 進行は作詞家永六輔。
 「夢であいましょう」の出演者が「上を向いて歩こう」をメドレーで歌い、
 閉めで坂本九(4:38から)が登場する。
 永の「上を向いて歩こう」についての回想が最高に興味深い(5:25から)。


 (海外でヒットするまでの経緯は有名なので詳細は割愛。)

 63年英国ではMidnight in Moscow(62年3月17日全米2位)のヒットを持つKenny Ball and his JazzmenがSukiyakiのタイトルでインスト・カバーして大ヒットさせた。↓

 Sukiyaki/ Swanee River
  Pye 7NJ2062 63年発売全英10位(最後のTop10ヒット)



 デキシーランド・ジャズ風のアレンジで、こちらも素晴らしい内容だ。
 ドン・シャカと賑やかに始まるのだが、曲が進むにつれて締め付けられるように胸が熱くなるのはどうしてなのだろう?

 私は01年に英国Castle Recordsから発売された2枚組The Pye Jazz Anthologyを持っているのだが、残念ながら既に廃盤。 何と未開封のままだ。(聴かねば!)
 手頃なCDはこれかな。↓

Greatest Hits
Castle Pulse
2000-05-16
Kenny Ball

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 米国では日本語のオリジナル盤が発売されたが、やはりタイトルはSukiyakiだったうえに、Sukiyakaと誤植されたものが一部出回ったらしい。
 英語以外の外国曲としては異例のビルボードで3週連続1位となり、ゴールド・ディスクまで獲得してしまった。

 Sukiyaki / Anoko No Namaewa Nantenkana
  Capitol 4945 63年6月15日1位(3週)



 今の基準で見るとちょっと素人っぽい映像だが、モノクロである以外アングル等はかなり斬新で、逆に時代を感じさせない。
 しばらくして登場する九ちゃんは笑顔だ。
 この笑顔がこの曲の本質を表していると思う。

 Lyrics Rokusuke Ei (永 六輔) In Japanese the word roku means 6.
 Music Hachidai Nakamura (中村 八大) hachi means 8.
 Vocal Kyu Sakamoto(坂本 九) kyu means 9.
 These three men were called "The 6 - 8 - 9 trio".(六八九トリオ)
 Producer Koji Kusano (草野 浩二) ji or ni means 2.

 B面は61年公開の映画「喜劇 駅前弁当」から。↓


 因みに九ちゃんの前に英語以外で全米1位を獲得したのはイタリアのDomenico Modugno(ドメニコ・モドゥーニョ)のNel blu dipinto di blu (ヴォラーレ、英語圏Volare) 。

 Nel Blu Dipinto Di Blu (Volare) / Mariti In Citta
  Decca 30677 58年8月18日全米1位(5週連続) 



 97年イタリアのカンツォーネ等を始めヒット曲を収録したドイツRepertoire Recordsから発売された2枚組編集盤。個人的にはChe Sara(ケ・サラ)やSoleado(哀しみのソレアード、英語圏When A Child Is Born)が収録されていて重宝した。第2集も発売されている。↓


 余勢をかってLPも発売された。

 Sukiyaki and Other Japanese Hits
 (坂木九の唄う日本のヒット歌集) ※坂本ではなく坂木と誤植された。
  Capitol 10349 63年発売14位

Kyu Sakamoto - Sukiyaki and Other Japanese Hits

 Side One
 1.Ue o muite arukō (Sukiyaki)
 2.Tsun Tsun Bushi (The Tsun Tsun Song)
 3.Hitoribocchi No Futari (The Lonesome Two)
 4.Kyu-chan Ondo (The Kyu-Chan Folk March Song)
 5.Mo Hitori No Boku (It's Just Not the Real Me)
 6.Good Timing

 Side Two
 1.Boku No Hoshi (My Star)
 2.Kiminanka Kiminanka (I Couldn't Care For You, Not You, Not You!)
 3.Kyu-chan No Zuntatatta (The Zuntatatta Song)
 4.Hige No Uta (My First Whisker)
 5.Goodbye, Joe
 6.Anoko No Namaewa Nantenkana (I Wonder What Her Name Is)

 2ndシングル発売。
 China Nights (Shina No Yoru) / Benkyo No Cha Cha Cha
  Capitol 5016 63年9月21日58位



 オリジナルは38年渡邊はま子が発売したシングルだが、このヒットを受けて40年に公開された「支那の夜」では李香蘭(山口淑子)が劇中で歌った。
 太平洋戦争中は敵側の連合国軍兵士にも好まれて聴かれたそうで、ヨーロッパ戦線におけるリリー・マルレーン(Lili Marleen)のような歌。
 この曲を第2弾シングルに選んだのはマーケッティング上大正解だったと思う。
 実際にスマッシュ・ヒットした。



 ただし、戦時中は中国人と思われていた李香蘭は、戦後売国奴として裁判にかけられ、皮肉なことに日本人山口淑子と分かり放免された。
 一方、連合国側をリリー・マルレーンで慰問したドイツ出身のマレーネ・ディートリッヒ(Marlene Dietrich)は母国から裏切り者の烙印を押された。
 また、、「支那の夜」は国策映画のため内容自体に中国人を侮辱・差別しているため、今ではめったに目にすることは出来ない。
 一方で、同じ劇中歌ありながら「蘇州夜曲」が今でも耳にできるのに対し、「支那の夜」は日本人にその気がなくても「支那」と言う表現が中国側に侮辱的と受け取られるので封印された感がある。(自分にその気が無くても、相手が嫌がるのであれば、それはハラスメントになるのと同じだ。やはり気をつけねば…。)

 そのような複雑な問題と国内の権利関係もあり、この曲は04年まで日本で発売されることはなかった。

メモリアル・ベスト
EMIミュージック・ジャパン
2004-08-04
坂本九

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 China Nightsはこのメモリアル・ベストにボーナス扱いで収録されている。考えてみたらChinaと英語表記すれば何の問題もないし、映画との関わりでは「蘇州夜曲」が大丈夫なのだからOKじゃないかな?
 それと仏語ではChine(シン)で問題ないし、チャイナ、シン、シナも語源は秦(Thinai )で同じのなのだから、要するに当て字のように「支那」(シナ)を使うからいけないんじゃないか。こんなこと40年近く誰も気が付かなかったの? 
 とは言っても、恥ずかしながら九ちゃんにSukiyaki以外の全米ヒットがあったことすら知らなかった私に言う資格はないな…。

 よくもまあB面にこんな曲を選ぶなー。↓
 そもそもCha cha chaは日本の音楽じゃないぞ。
 でも、ちょっと面白い。
 歌詞が分からない外国人には、サウンドだけで勝負できる訳だ。


 因みに次に日本人が全米Top100にヒットを送り込むのは、Pink LadyのKiss In The Darkまで16年以上待たねばならなかった。↓

 Kiss in the Dark / Walk Away Renee
  Elektra 46040 79年8月4日37位

Pink Lady - Kiss in the Dark / Walk Away Renee



 10曲収録のLP Pink Lady(Elektra 6E 209)も発売された。↓ 

HMVジャパン

 画質が悪いので、敬意を表して見開きのジャケットを掲載しておこう。

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 81年にはA Taste Of HoneyがタイトルはSukiyakiのままJanice Marie Johnsonによる英語詞でカバーして大ヒットとなった。

 Sukiyaki / Don't You Lead Me On
  Capitol 4953 81年6月13日3位 ※九ちゃんと同じCapitolから発売。

A Taste of Honey - Sukiyaki / Don't You Lead Me On

 初めて映像を見たけど、着物に扇子と琴で、最後にサヨナラ。
 予想に反して結構ジャパネスクしてんだ。美しい。



僕たちの洋楽ヒット Vol.13 1981~82
EMIミュージック・ジャパン
2002-10-09
オムニバス

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 ↑このシリーズ全部持っているけど、日本独自のヒットも数多く収録しているので重宝している。


 私の持っているCDを紹介しておこう。
 Sukiyakiは100万枚以上を売り上げ、64年5月15日東京のホテル・オークラでキャピトル・レコードからアメリカレコード協会(RIAA)のゴールド・ディスクを授与された。
 ジャケットはそのゴールド・ディスクを手にしている写真だ。

VERY BEST OF KYU SAKAMOTO
EMIミュージック・ジャパン
1994-09-07
坂本九

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 ↑ 94年発売の25曲78分以上収録のベスト。
 60年代の録音の多くがMonoで収録されているが、音質は良好である。
 今回聴き直してみて73年12月1日発売のNHK人形劇「新・八犬伝」のエンディング・テーマ「夕焼けの空」が収録されていることを思い出してビックリした。 残念ながら既に廃盤だ。

 最後にどうしても伝えたいのは、SukiyakiのStereo盤が存在することだ。
 01年に米国の復刻専門レーベルEric Recordsの看板シリーズHard To Find Vol.7に収録されている。

Hard-To-Find 45's on CD 7: More 60s Classics
Eric Collection
2001-10-16
Various Artists

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 Mono盤も素晴らしいのだが、Stereo盤も強烈である。
 中央にヴォーカル、ベース、中央左寄りにドラムス、左にホーン・セクション、口笛、右にストリングス。
 決して電気的に変換した擬似Stereoではない。
 リアルStereoである。
 波のように寄せては引くようなストリングス。
 ホワ~ンと優しく包み込むようなホーン。
 音の分離が良く、当然音場は広くなっている。
 どうしてこんなスゴイものが、日本の倉庫からではなく米国から逆輸入されるのか?
 上で紹介したSukiyakiの映像にStereo音声を被せた映像があるので、ぜひ自分の耳で確かめてみて!
 


 ↑残念だけど削除されちゃったね…。

 どうしてこんな日米逆転現象が起こったのか誰か教えて!
 えっ?旧東芝の倉庫から発見されたオリジナル・セッション・テープから、既にもっと高音質のStereo盤がリミックスされてるって!そんな訳ないか…。
 これが本当だったら国宝級の大発見だ。
 もしも、国内盤でこの輸入盤を超えるStereo盤を収録しているCDが存在するなら、即ゲットするぞ!

 P.S.削除されたリアルStereo盤の替わりに、左と中央から演奏、右からヴォーカルのStereo盤を見つけたのでご紹介しておこう。↓



 稚拙なミックスから推測すれば、発売時期までは分からないが、だいぶ昔からStereo盤も存在していたようだ。

 (おまけ)



 ↑62年3月4日公開の映画ヴァージョン。
 「思い出す冬の日」等の独自の歌詞が追加されている。
 追加された歌詞のとおり、手をつなぎながら歌っている若い僕らは、左から渡辺トモコ、浜田光男、坂本九、吉永小百合、高橋英樹。(20才の九ちゃん以外は4人とも10代だった。)
 日本という国が、まだ若かったことが実感されるエンディングだ。

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