John Lennon(ジョン・レノン) Signature Box(ジョン・レノンBOX) その5

 前回に引き続いてJohn Lennonのボックスの5回目。
 前回は私の音質、リマスター、リミックスについての考えを述べた。
 いよいよ、今回聴き比べについてレビューしようと思ったのだが、
 最初に手が伸びたのはリミックスCDを持っていない、
 と言うよりはアナログLPでしか聴いたことのないRock 'n' Rollだ。

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 Johnの死後の追悼番組等でプロモーション・フィルムがへヴィー・ローテーションされていたStand By Me とSlippin' And Slidenしか知らないのに、高校2年のパーティーで、買ったばかりのこのLPを意気込んで流し、意外と受けなかったことにガッカリしたことを思い出した。

 Johnの第一声「ウェエエ~ル」から始まりアコースティック・ギターの「ズン、チャン、ズン、チャン」の激しいストロークで始まるこのアルバム。
 本アルバムでカバーされた原曲は軽快なロックンロールが多い。



 ↑(何で収録されていないJohnny B. Goodeなのかな?)

 でも、このアルバムは軽快ではなく重厚なのである。

 このアルバムの背景について少し説明しておこう。

 Johnは69年のCome TogetherがChuck BerryのSweet Little Sixteenの盗作だと訴えられていた。
 この曲は、John独特のユーモア精神(おちょくり)なのか、Chuckへのトリビュートなのかは分からない。
 もしかしたらサージェント・ペッパーズのジャケットへの写真無断使用と同じく確信犯的なパロディなのかもしれない。
 恐らくゼロではないにしろ、訴訟騒ぎに至る可能性はかなり低いと思っていたはずだ。
 よりによって、The Beatlesのメンバー全員に敬愛されていたChuck Berryに訴えられるとは…(その他にRock 'n' Roll MusicやGeorge Harrisonの十八番であったRoll Over BeethovenもChuckの曲だ。)
 因みにGeorgeもMy Sweet Lordで盗作問題を抱えていた。

 さぞや辛かっただろうと思いきや、訴えたのはChuckではない。
 この曲の権利を有するChuckとは全く無関係の会社だ。
 60年代まで、売れっ子は別としてアーティストは弱い立場にあり(特に黒人は)、大ヒットを作詞・作曲しても、それ以前のレコード化の段階で非常に不利な契約を締結させられ、儲けの多くはマネージャー、出版会社、プロデューサー、レコード会社に持っていかれていた。

 だから、Chuckにはおそらく何の被害もなく、むしろ話題になって今後の営業に追い風が吹くと思ったぐらいだったかもしれない。だから二人の間には、わだかまりはなかったようだ。
 実際、二人は72年2月のMike Douglas's Showで共演している。↓


 
 その後、ChuckはMy Ding-A-Ling(私のおチンチン)で72年10月22日から2週連続で初の全米1位を獲得し、何とElvis PresleyのBurning Loveの1位を阻んだ。



 ↑お客さんがかなり恥ずかしそう。(こんな曲にElvisが…そんな…)

 それと、このアルバムのジャケット写真!
 ドイツ・ハンブルグ時代(61年)の1枚。
 前を走っているのはPaul、George、Stuart Sutcliffeの3人。
 カッコイイ。
 そして、この映像。



 ↑初めて字幕なしで見たときは何が起こったのか分からなかった。
 ちょっと、おどけたステップで登場した若者…。(親父のように)
 Julian Lennonか…、若い頃のJohnを彷彿とさせる。
 Johnに捨てられたけど、実子だからな…。 びっくりしたな。

 それでは、本題に入ろう。

 最初に書いたとおり本アルバムでカバーされた原曲は軽快なロックンロールが多い。
 Johnはオールディーズのカバー・アルバムを企画し、プロデュースをPhil Spectorに任せた。
 このアルバムにはChuckのSweet Little Sixteenも収録されることとなったが、訴訟の和解条件の1つだったようだ。
 この頃Phil Spectorはビジネス的には落ち目にあったが、オールディーズとくれば適任と思われた。

 しかしである、二人ともかなりひどい状況にあった。
 Johnは73年11月Mind Games発表後、Yokoと別居、秘書May Pangとロサンゼルスに移住して酒におぼれる18ヶ月(Lost Weekend)に及ぶメチャクチャな生活をしていた。
 Philもパラノイア状態にあり、拳銃を持ち歩き、実際にスタジオ内で発射するという奇行に走り、最後にはマスター・テープを持ち逃げしてしまう。

 最終的にマスター・テープは戻ってきたのだが、ひどい内容で使えるのは4曲だけだったとか…。
 みんな酔っ払っていたから盗まれたテープには、さぞや素晴らしい録音が残されているものと勘違いしていたのだろう。
 残りの曲はリメイクされるのだが、Philの代名詞となったWall Of Sound(音の壁)は引き継がれた。
 だからサウンド的にはかなり重厚(ヘヴィー)に仕上げている。
 重くて、深くて、濃いイメージ。
  
 この重くて、深くて、濃い、の中で「深い」をもう少し詳しく説明すると、
 「天井が高く、底が深い」イメージだ。
 「忘れてはいけない」のが、これは「忘れかけているLP時代の曖昧な記憶」ということだ。

 今回聴いてみて、音場がキュッと収縮し、奥行きが深くなったイメージ。
 あれ、どうなっちゃたのかな…。
 まずは、自分のオーディオに何らかの不具合が生じたことを疑った。
 最近、色んな物が壊れるので…。
 次に自分の体調を疑ってみた。
 最近、かなり疲れているので…。
 
 ふと、リビングのテーブルでブログを書きながらではなく、左右のスピーカーを底辺とした三角形の頂点で聴いてみた。
 来ました。音場が一変し、音の壁がバ~ンと面で来た。
 元々Wall Of Soundとは、バック演奏を何度もダビングすることで音の隙間を埋めた密度の濃いサウンドをベースとしている。
 ダビングすればするほど音の鮮度は劣化すのだが、音が歪むギリギリまでダビングを繰り返す。
 これが、人によっては、強いエコーのように聴こえるらしい。
 決して、エコーをかけているのではない。
 その塗り固められた音の壁のようなバック演奏に、くっきりとヴォーカル等が浮かび上がるのだ。

 ところで、このアルバムでは昔のようなダビングは行われていない。
 たぶん、格段に精度の上がったエコー・マシーンは使用されているのかな?
 とにかく音圧を上げて音の壁的な演出を行っている。
 低域から中音域を持ち上げて、音の厚みを感じさせている。
 どっしりした低音に対して、ギターやブラスの高域は強調していない。
 だから、キンキンした高音が耳に付くことはない。
 ジョンのヴォーカルははっきりしており、質感が向上した。
 唯一、曲によってはジョンのヴォーカルが変則ダブル・トラックとなっており、中央のメイン・ヴォーカルに対して右にサブ・ボーカルのように聴こえるものがあるが、これはサブがはっきりし過ぎて違和感があった。
 総合的な印象としては、リマスターの効果が十分感じられて、John Lennon風音の壁を体感できる。
  
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 それにしても、Julianがデビューした時、もしJohnが存命だったら…。
 Julianのように辛い思いはさせたくないと、Seanのために5年も休業したのだから、どんな親バカぶりを発揮したか見ものだっただろうな。知らない振りしたら、2回捨てたことになるぞ!(私はいつもJulianの肩を持ってしまう)
 最近、Johnが生きていたらどうしただろうと想像するのが楽しい。
 スターとしては空想するしかないが、父親とか爺さんとしてなら何となくストーリーが描けて面白い。
 今年の夏は暑過ぎたから、日本には紅葉を見に秋に来るらしいとか…。
 特注の金色のプリウスを乗り回しているとか…。
 続きは次回で…。

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この記事へのコメント

foolishpride
2010年12月29日 18:35
こんにちは。内容の濃いブログですね。面白く読ませていただいてます。
ところで、ウォール・オブ・サウンドはダビングを重ねるものではなく、ベーシックは基本的に一発録りです。一箇所に大勢を詰め込んで録るので、音の分離が甘いのです。ある楽器のために立てたマイクが、別の楽器の音まで拾ってしまうわけです(リーケッジ、ってやつですね)。それがエコーのように響く、ということらしいです。
2010年12月30日 01:18
foolishprideさん
コメントありがとうございます。
ご指摘を受けて勉強になったと言うよりも恥ずかしさでいっぱいです。
始めはオーケストラをホールの天井からつるした1本のマイクで録音するワン・ポイント録音をイメージしたのですが、複数のマイクを使用しての一発録音がミソな訳ですね。
その(恐らく)4トラック録音を2チャンネルStereoではなく1チャンネルMonoにミックス(ダビング)することで密度の濃い音の壁が完成する訳ですね。
ダビングするにしても実質1回程度ということですね。なるほど。
私はThe Beatlesを始め英国で流行った2トラック録音を1トラックにダビングして、1トラック分の空きを作り出すリダクション・ミックスを何回か繰り返すのかと思っていました。
確かにBrian WilsonのPet Soundsセッションの膨大なブートCDを聴いても、ベーシック・トラックは基本的に一発録音ですね。
と言うことは、各演奏者の位置関係とマイクのセッティングが非常に重要となる訳ですね。
表現が変ですが、ワン・ポイント録音を位置を変えて4ヶ所で同時に行うような感じでしょうか。
その音が混じり合った4トラックを1チャンネルMonoにダビングすればスゴイことになりますね。なるほど。
ありがとうございました。

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